この事例の依頼主
40代 男性
相談前の状況
相談者は、運送業を営む会社に勤めていましたが、言動が乱暴であるなどとして、一方的に解雇されました。話を聞くと、残業代もまったく支払われていないようでした。
解決への流れ
この案件を引き受けてから、労働審判を起こしましたが、相手方が異議を申し立てたため、通常の裁判に移行しました。裁判で会社側は、解雇は有効であり、残業代に関しては歩合給に含まれているため、支払い義務はないなどと主張してきましたが、解雇無効・残業代に付加金がすべて認められる判決を得ました。しかし、その後法人名義を替えたため、差し押さえができませんでした。そこで、強制執行を免れるための名義替えだとして、仮差し押さえをした結果、満額回収に至りました。
労働者は賃金で生計を維持しているので、企業は労働者を一方的に解雇することはできません。合理的で、社会的に相当する解雇の理由が必要です。注意や指導を徹底していない解雇、解雇を避けるための方策を尽くさない解雇は無効です。また、解雇を争う事案では、残業代の未払いがあることが多いです。特に、この事件のような運送業では、労働者自身も未払残業代があることに気づいていないことがあります。労働時間は、タイムカードだけでなく、日報やタコグラフ、ICカード・PCのログアウトの記録や、ひいては日記や帰るコールなどでも証拠となります。本件のように、手当てなどに残業代が含まれるという制度を採っていることも多いですが、厳格な要件を満たすことが必要であり、残業代の支払いとして認められないこともかなりあります。さらに本件で会社側は、法人格を替えるという方法で強制執行を逃れようとしましたが、実態として変わりがないことを主張・立証して回収に至りました。勝訴判決を得るだけでなく、回収についても工夫を凝らす必要がある例です。