この事例の依頼主
男性
相談前の状況
被害者は小学生であり,歩行中に車道に出たところを四輪車にはねられ,急性硬膜下血腫,びまん性軸索損傷等の重傷を負われました。約1年間治療を続けられた後,症状固定するかどうか迷われ,今後の方針についてご両親が相談に来られました。ご両親は,右片麻痺が残ったこと以外にお子様の記憶力に問題が残っているのではないかと感じておられましたが,この記憶力の問題が後遺障害の認定に結びつくものなのかどうか,疑問に感じておられました。
解決への流れ
記憶力等の認知の異常が高次脳機能障害と認定される場合は,その程度に応じて後遺障害の等級が認定されるとご説明させていただき,症状固定後の後遺障害等級認定の申請の際の手続きの代理をさせていただきました。高次脳機能障害が疑われる場合,後遺障害等級認定の申請にあたっては,提出しなればならない書類が何種類かあります。その書類の中には,被害者と共に生活しているご家族に記載いただく必要のある「日常生活状況報告書」などがあり,ご両親からは,記載の方法についてご質問を受けましたので,アドバイスをさせていただきました。また,加害者側保険会社に対する損害賠償請求の際には,ご両親が行われた看護の負担を詳細に主張し,看護費用の増額を求めました。加害者側保険会社は,介護費用の増額は容易には認めず,事故状況からは被害者に25%の過失が認定されるのはやむを得ない状況でしたが,その代わりに,解決金として賠償額を1割程度増額するなど,最終的に十分な賠償額を獲得し,示談することができました。
高次脳機能障害とは,脳に損傷を負ったことで,認知能力(記憶力,判断力,集中力等)や性格・人格に異常が生じることいいますが,認知能力や性格・人格といった部分の問題であるため,被害者本人に自覚症状がなく,周りの家族も,外傷が回復するのと同時に回復していくのではないかと考え,見逃されてしまうことが多いという特性があります。職場や学校に復帰した後に,周囲から「以前と人が変わった」などと指摘され,社会生活に支障が生じて初めて異常に気付いたとしても,その段階で高次脳機能障害を加害者側に適正に賠償させようと思っても手遅れということもあります。したがって,交通事故で脳に損傷を負った方やそのご家族は,早期の段階で,高次脳機能障害に詳しい弁護士に相談されることをお勧めします。