犯罪・刑事事件の解決事例
#遺産分割

亡くなった夫の異母兄弟からの,相続分の主張がなされたケース(夫による生前の遺言書の作成が強く望まれたケース。))。

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染矢 修孝 弁護士が解決
所属事務所弁護士法人染矢修孝法律事務所
所在地福岡県 福岡市中央区

この事例の依頼主

70代 男性

相談前の状況

夫が亡くなったため,その妻となる方が相続の手続き等を行うため,夫の戸籍を取り寄せたところ,夫には,その相続人として,父母を同じくする兄弟のほかに,異母兄弟がいることも判明し,これまでに異母兄弟とは全くの交流がなかったため,遺産分割手続きが進まなくなり,弁護士の下へ相談に来られました。夫に異母兄弟が存在することを,夫が亡くなるまで知らされていなかったため,妻は大変困惑し,夫と一緒に住んでいた自宅土地建物を手放さなくなるのではないかと大変不安を持たれていました。このようなケースで,夫の異母兄弟姉妹から,相続分を主張された場合,妻の立場で,異母兄弟姉妹からの相続分の主張に対応してほしい,という内容のご相談でした。

解決への流れ

上記のような相談をお受けし,まずは,異母兄弟にも「相続分」が認められることとなるが,「相続分の譲渡」という手続きがあること,また,万が一異母兄弟からの「相続分の譲渡」を受けることができなくとも,金銭的な解決も可能であること,そのため遺産の自宅土地建物を失うことについて過度に心配をすることはないことなどを説明し安心してもらいました。そのうえで,ご依頼を受けたのち,早速,当職において戸籍の附表などから異母兄弟の住所を把握し,依頼者への「相続分の譲渡」のお願いをする通知をお出ししました。しかし,弁護士からの通知に対して,異母兄弟からは,残念ながら「相続分の譲渡」について快い返事をお受けすることはできませんでした。そのため,依頼者である妻を代理し,家庭裁判所への調停の申立を速やかに行うこととしました。調停において数回の話し合いを行った後に,最終的には,夫の全血の兄弟の方々からは,妻は「相続分の譲渡」を受けることが出来ましたが,異母兄弟からは「相続分の譲渡」を受けることが出来ず,異母兄弟の相続分に対応する金銭を支払うことで解決することとなりました。今回の事例では,幸い遺産の土地建物に関して,固定資産評価額を基準に相続分の計算を行うことの合意を行うことができため,異母兄弟への相続分に対する金額は比較的抑えることができました。

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染矢 修孝 弁護士からのコメント

今回の事例では,夫が亡くなった際の法定相続人としては,妻と兄弟姉妹となります。また,その際の相続分は,妻が4分の3で,夫の兄弟姉妹は4分の1(もっとも,異母兄弟は,半血の兄弟姉妹となるため,全血の兄弟姉妹のさらに2分の1となります。)の法定相続分割合となります。そのため,夫が何ら遺言を遺していないという場合には,妻は,(夫の資産形成にあまり貢献していないと考えられる)夫の兄弟姉妹から,法定相続分の主張があれば,その分を渡さざるを得ないということとなります。これは,半血の兄弟姉妹に対しても同様です。通常,夫の,異母兄弟との交際はあまり無いでしょうし,夫の財産形成に何らかの寄与をしているということは無いでしょうから,妻としては,なかなか受け入れることは出来ません。今回の事例のような相続人の構成の場合には,やはり,妻としては,夫にその財産すべてを渡すという内容の遺言を作成してもらうことが,最も有効な解決策となります。また,兄弟姉妹には,いわゆる「遺留分」(簡単には,法定相続人のうち一定の者に確保された遺言でも侵せない最低限の取り分。)もありませんので,夫から遺言を遺してもらっていた場合,妻は,夫の全財産を相続出来ることとなります。その意味で,今回の事例では,亡くなった夫による遺言作成の必要が非常に大きいと考えられました。今回の事例と同じような相続人の構成となっている場合や,そのほか遺言を書いておくべきか迷われるケースでは,どうぞお早めに遺言書の作成等に関し弁護士へのご相談をされることをお勧めいたします。